活動報告

2019年5月の第13回のシンポジウムに多くの方の参加をいただき誠にありがとうございました。
テーマは『日本の動物園の新地平~北の大地から日本の動物園を考える』として会場を北海道札幌市円山動物園・科学館ホールにて地元北海道ほか全国より100名以上の市民らの参加者をいただき開催いたしました。

基調講演では当会の岩野俊郎氏から始まり、古賀公也・釧路市動物園園長、加藤修・円山動物園園長の講演をいただき、参加者のみなさまにこれまでの動物園のこと、そしてこれからの動物園、動物の飼育、保護、環境の保全のことまでを考えた意見の発表と提案をすることができました。目指す国立動物園のカタチやアイデア、また動物そのものの法律的な問題や解決への思いなど、6名(小菅氏、岩野氏、古賀氏、加藤氏、あべ氏、成島氏)による総合討論でものそれぞれの意見と提案を示しました。

旭山動物園を始め様々な取組みと挑戦をしてきた北の大地での第13回シンポジウムは地元メディアにも取り上げられ、新たな展開を感じさせるシンポジウムとなりました。


登壇者紹介


特定非営利活動法人国立動物園をつくる会主催
第13回 シンポジウム

場所:札幌市円山動物園 科学館ホール
日時:2019年5月11日(土)13:00~17:00
参加費:無料(※円山動物園への入場料金は必要です)
テーマ:『日本の動物園の新地平~北の大地から日本の動物園を考える』

開会あいさつ・シンポ趣旨説明
小菅 正夫 代表
(札幌市環境局参与円山動物園担当・北海道大学客員教授)

基調講演1(40分)
岩野 俊郎(到津の森公園 園長)
「動物園のデザイン」

基調講演2(40分)
古賀 公也(釧路市動物園 園長)
「市民に支えられる最東端の動物園の今」

基調講演3(40分)
加藤 修(円山動物園園長)
「円山の新挑戦、改革の進捗」

総合討論
司会:諸坂佐利(神奈川大学)

討論参加
小菅正夫、岩野俊郎、古賀公也、加藤修、あべ弘士、成島悦雄


開会あいさつ・シンポ趣旨説明




 


基調講演


岩野 俊郎(到津の森公園 園長)「動物園のデザイン」


12回のシンポジウムで取り上げたテーマ「動物園のデザイン」を13回シンポジウムではよりポリシーを必要とする動物園のデザインについて提示していく。動物園は「自由」に生きるという動物の「多様な選択肢」の剥奪になっている。これからの動物園は単に「見せる」、「見る」からいわゆる「展示」からの変革が必要。

この「展示」という言葉についてはここ数回のシンポジウムの討論においても表現についてから始まり、動物園のポリシーから生まれる、動物の見せ方にもつながっている。それは構造物のデザインのみでは変えることができない。

空間をどのように活用するか。どのような意図をもたせるか。なぜそれが必要か。デザインという言葉の意味は入念な「計画・立案」であり、重要なのは「ポリシー」あるいは「倫理的思考」である。「我々は何のために存在するのか」という哲学的な意義の確定。動物園にもそれが必要だ。明確なポリシーあるいはフィロソフィー。少なくとも直近10年もしくは15年揺るがない決心でおこなう。そして明確なコンセプトを持った戦略と準備、計画、運用を示す。



古賀 公也(釧路市動物園 園長)「市民に支えられる最東端の動物園の今」


釧路市動物園は北海道釧路市阿寒町にある日本最東端の動物園。 1975年に開園し総敷地面積47.8haとゆったりしとした北海道最大の動物園である。動物の保護研究機関として1995年に世界で初めてシマフクロウの飼育下での繁殖に成功しており、国内唯一のシマフクロウ保護育成センターになっている。

北海道の中でも自然豊かな環境の中にある。アムールトラのタイガとココアの懸命に生きようとする姿が注目され多くの市民や人に支えられて、多くのメディアや書籍にもなった。施設は決して先進的な展示や運営ができているわけではないが、タンチョウヅルをはじめ多くの繁殖と保育にも成功しており、何より市民に支えられての展示のアイデアなど、釧路という環境にある動物園としてこれから明確に何を伝えていくのか、環境の保全と動物の保全、市民や地域への感謝と還元を目指している。



加藤 修(円山動物園園長)「円山の新挑戦、改革の進捗」


1950年(昭和25年)上野動物園の移動動物園を札幌にて開催し、好評を得たことが起源。2003年(平成15年)に旭川市旭山動物園に入場者数を抜かれたがその後、整備に力を入れ始め入場者数は増加傾向にある。 最初の飼育展示動物は3種4点。2019年3月現在は168種943点(昆虫類を除く)を展示飼育。総面積は224,780㎡。飼育下での自然繁殖が難しいとされるホッキョクグマの繁殖に成功している。

現在ではホッキョクグマ館リニューアル、ゾウ舎オープンと、進化する動物園と称されているが、改善前は管理体制の見直しや全職員への適正飼育を理解するための教育の実施、動物の健康、安全のための施設の総点検など、多くの改善勧告を受けた動物園であった。

動物専門員という技術職員の配置で自らの仕事を自ら考え、上司と相談しながら自ら実施し、結果についても自ら責任をとることで意識と技術、スキル、経験値を高めていった。環境教育の施設として、より多くのお客様に来園していただくことは必要ではあるが、何人の方に来ていただくか、ではなく「来ていただいた方の何割の方に、自然や地球について考えていただけたか」が大切だと考えている。

すべての人が自然環境の大切さを「実感」し、自然を守るために「行動」し、自然と人が共生する持続可能な社会の「実現」に貢献するため、円山動物園は「動物福祉」を根幹に生物多様性の「保全」と「教育」に力を入れていくとともに「調査・研究」「リ・クリエーション」を行っていく。




 


総合討論


小菅正夫 氏
(特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授)

岩野 俊郎 氏(北九州市 到津の森公園 園長)
古賀 公也 氏(釧路市動物園 園長)
加藤 修 氏(円山動物園園長)
あべ 弘士 氏(絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長)
成島 悦雄 氏(公社)日本動物園水族館協会専務理事・日本獣医生命科学大学客員教授 

司会・進行:諸坂 佐利 氏(神奈川大学准教授)


第13回のシンポジウムの最終プログラムは園長経験を持つ小菅氏、元飼育員経験を持つあべ氏、現在も園長として運営に携わる岩野氏、古賀氏、加藤氏、そして豊富な知識と経験を持つ成島氏、それぞれの立場での意見を100名を越える市民や動物園関係者の前で討論できたことは「国立動物園の開設の必要」を一歩、二歩と踏み込んでこれからの動物園の意義や役割、環境や野生動物の保全に向けた考えを人々に伝える機会となった。
多くの国民が国立動物園を必要だと思っていただくことが大切であり、そのカタチは必ずしも新しい施設をつくることではなく、今ある環境、施設を活かし「保全に特化したセンターをつくって動物を飼育し、その様子を一般に見せていく施設」など、提案、アイデアは尽きることがない。国立の施設ができれば野生生物の研究、保全が進むであろう。また法律的にも動物園に意義や役割を定めた動物園法の整備も必要である。日本の動物園の今後について、これからも議論を交わし絶滅の危機にある動物の保護、多様性の維持を目指す。



テーマ 「日本の動物園の新地平~北の大地から日本の動物園を考える」


開催日:2019年5月11日(土)13:00~17:00
場所:札幌市円山動物園 科学館ホール
https://www.city.sapporo.jp/zoo/b_f/index.html

プログラム

13:00
開会あいさつ・シンポ趣旨説明
◼️小菅 正夫 氏
  札幌市環境局参与円山動物園担当・北海道大学客員教授

13:05
プログラム1
基調講演1(40分)
「動物園のデザイン」
◼️岩野 俊郎 氏
  特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授

13:45
プログラム2
基調講演2(40分)
「市民に支えられる最東端の動物園の今」
◼️古賀 公也 氏
  釧路市動物園 園長

14:25

プログラム3
基調講演3(40分)
「円山の新挑戦、改革の進捗」
◼️加藤 修 氏
  円山動物園 園長

15:15
プログラム4
総合討論

上記のプログラムを受けての問題提起、質疑応答(フロアを交えて)

◼️小菅正夫 氏
  特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授
◼️岩野 俊郎 氏
  北九州市 到津の森公園 園長
◼️あべ 弘士 氏
  絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長
◼️成島 悦雄 氏
  (公社)日本動物園水族館協会専務理事・日本獣医生命科学大学客員教授
◼️古賀 公也 氏
  釧路市動物園 園長
◼️加藤 修 氏
 円山動物園 園長

司会・進行:諸坂佐利(神奈川大学准教授)

17:00 閉会


シンポジウム報告


2019年5月の第13回のシンポジウムに多くの方の参加をいただき誠にありがとうございました。

今回は札幌の円山動物園内にてシンポジウムを行い、100名を超える参加者や報道陣などさまざまな方々に参加いただきました。動物園内にて動物園がどうあるべきかを考えるシンポジウムは、大変意味深いものだったと考えております。ご質問もご意見も活発に飛び交い、有意義な会であったと思います。

今回ご登壇いただきましたの方の考えを掲載いたしておりますので、どうぞご覧ください。


第13回シンポジウム概要報告はこちら



2018年12月の第12回のシンポジウムに多くの方の参加をいただき誠にありがとうございました。

前回のテーマを引き続き「動物園をデザインする2」に動物園関係者から学生の方々にも興味を持たれ、多くの参加をいただきました。今後将来、動物園はどうデザインされるべきか?、実際の実例をご紹介しながら、種の保存、環境、教育など学問研究の立場や実際に動物園を設計、マネジメントをする立場であるリーダーたちにご登壇いただき、議論を交えました。

今回ご登壇いただきました方の考えを掲載いたしておりますので、どうぞご覧ください。


登壇者紹介


◾️ 小菅 正夫 氏
特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学客員 教授

◾️ あべ 弘士 氏
絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長

◾️ 岩野 俊郎 氏
到津の森公園 園長

◾️ 森田 哲夫 氏
宮崎大学 名誉教授

◾️ 成島 悦雄 氏
(公社)日本動物園水族館協会専務 理事・日本獣医生命科学大学客員 教授

◾️ 松崎 淳 氏
株式会社とんざこ設計室 代表

◾️ 河村 敏彦 氏
DIDE 代表 クリエイティブディレクター・グラフィックデザイナー・農業家


プログラム1 基調講演


「日本の動物園のデザインにおける現状と課題、そして今後の展望」


特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授 小菅 正夫 氏


~旭山動物園での実例~


第11回シンポジウムでの基調講演において示された、動物園デザインの定義に沿って旭山動物園の再生時に我々が立てた“入念な計画”を紹介する。


1. 揺らがない指針の策定


テーゼを『伝えるのは 命』とした。形態比較展示ではない、生態的展示はない、命を展示しようと考えたのだ。命は肉体と共に在ってしか感じられないが、突然生ずるものでもなく、肉体の死によって消え去るものでもない。命を展示するためには、命の繋がりつまり交尾・出産・育児を見せることが必要。この連続の中に微妙な変化が生じ、無限の連鎖がその集積により別種を生み出すことで、種の多様性を生み出し、まるで幹から枝葉に拡がるような系統樹を形成するように進化が見られることを展示を通して伝えようと考えた。そのためには、誕生以前から、繁殖による命の連続、そして肉体の死までを展示することが必要だと考えたのだ。

具体的に、霊長類の展示計画例を紹介する。
旭山動物園では、開園当時からマカク5種とマンドリル、テナガザル、チンパンジーを飼育していた。施設の増築は不可能な状況であったが、展示動物を変更することで先のテーゼに沿った飼育計画を立案し実施した。霊長類の進化を考え、原猿の代表としてワオキツネザルを飼育し、次に広鼻猿のクモザル、狭鼻猿のうちアフリカ系2種とアジア系1種を集めた。ヒト上科としてテナガガザル、ヒト科のオランウータン、チンパンジーを揃え、原猿からヒトへと向かう命の繋がりを展示することとした。


2. 科学的視点の動物舎デザイン


何を展示するかを決定した後は、どう展示するかだ。
飼育施設の建設に当たっては、科学的視点でのデザインが必要となる。彼らが生きていく上で最も快適なのは生息地の自然環境である。よって、施設の計画者が直接現地へ行って、動物の暮らしとその環境を観察し、実感することが肝要だ。その感覚に基づいて、動物が利用する構造物を考案し、彼らの行動を如何にして誘発するかを考えることが重要だ。また、自然界では決して見られない、飼育下特有の行動については、何としても発現されないような工夫も必要となる。

オランウータン舎について、それらの考え方を紹介する。
もともと、この獣舎はゴリラを飼育していた施設であった。オランウータンの暮らしはボルネオ・サバ州のダナンバレーで観察することができる。生息地は30m以上もある高木が生え揃っており、彼らは樹上で暮らし、ほとんど地上に降りることはない。(時に塩類泉へ降りていき、それを飲むことが知られている)また、移動手段は直径5cmほどの樹を引き寄せて掴まり大きくたわませて次の樹を引き寄せて移っていく。地面はもちろん凸凹がありしかも下草が茂っているので、我々がその後を追うことはとてもできない。

これらの環境をどう飼育環境に取り入れることができるか、が施設デザインの基本となる。先ずは30m程度の鉄塔を建て、その間に棒高跳びに使用する柔軟で折れない細めの棒を数本立てて、これを利用して彼らが独自の行動が取れるようにしたかったが、そのアイディアは屋内施設でこそ可能であるが、屋外で計画するとなると逸走防止の観点から高さのほぼ2倍以上の敷地が必要なることは自明である。そこで旭山では2本の塔をロープで繋ぎ、ブラキエーションができるようにしようと考えた。ところが、30mもの円柱は途中で溶接しなければ製造できず、溶接すれば長年使用すると金属疲労で折れてしまう危険性があるとされ、一本物としては最長の地上高17mで作製することとした。次にロープで繋ぎ、腕渡りをさせることについても、構造計算の結果、金属疲労を早めるため不可能と判定されてしまい、塔をH鋼で繋いで下にロープを繋ぎ止めて使用するように設計した。

また、既存の放飼場の天井檻は鉢を拡げたように開き、万が一落下しても施設外への逸走を防ぐ構造を取り、外の塔の中段部分には球体の居住スペースを設け、地面は掘り下げて50cmほどの水を張って、飼育下でしか見られない地上で休むことを不可能とした。

この施設では、オランウータン本来の樹上行動が見られ、さらには交尾、出産、育児行動が見られ、第二子出産の一週間後には、腹に新生児を抱いて第一子を伴って渡って行く様子が観察された。動物が快適に暮らし、命を繋いで行く様子を展示することが、テーゼ『伝えるのは 命』の実践である。


3. 当時は見過ごしてしまったデザイン


日本の動物園で、最も貧困なのは“野生個体群との関わり”である。動物園は域外保全施設であると表明している動物園も見受けられるが、域外保全とは域内保全を保管するために必要なので、生息地での保全活動と関わりを持たない域外保全など、まったく意味がない。少なくとも、生息地との交流を進め、リアルタイムで生息地情報を開示する努力はすべきだ。また、保全に拘わる現地組織を支援することができれば、域外保全の意味も多少は認められるかもしれない。

また、岩野氏の提唱する(第11回シンポジウム)“生物同士としての科学的理解”について、日本の動物園ではまだまだ研究者が不足していると言わざるを得ない。最近一部の動物園では、ようやく生物学や生態学を修めた人や動物行動学、心理学、さらには哲学を修めた人が動物園技術者として動物園の現場へ入って来るようになった。

将来の動物園デザインを考えるとき、この分野の整備は絶対に必要である。そのことを内外に示すのが国立動物園設立の大きな意義であると考えている。




 


プログラム2 対談


「旭山動物園の軌跡と奇跡」


特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授 小菅 正夫 氏
絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長 あべ 弘士 氏



補足コメント:松崎 淳 <株式会社とんざこ設計室 代表>

小菅さんとあべさんの話を聞いて、あべさんが「獣医と飼育員の技術の関係」を小菅さんが入ってきたときの話でしゃべられてました。飼育員の方がすごいんだという話はすごく楽しかったです。あの話を聞いて、飼育員にも認定制度があればいいのにと思いました。飼育員が技術研修(飼育技術だけでなく、動物福祉、研究、環境教育など多面で)を行うと、1級、2級とか技術を認める制度があれば、飼育員の地位が上がるのではないかなと獣医より上の認定の階級があってもおもしろいなと。国立動物園をつくる会には、様々な技術を持っている人がおられるので、環境省などと連携して国の認定制度をつくっても面白いのではないかと感じました。



 


プログラム3 総合討論


絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長 あべ 弘士 氏
北九州市 到津の森公園 園長 岩野 俊郎 氏
宮崎大学名誉教授 森田 哲夫 氏
(公社)日本動物園水族館協会専務理事・日本獣医生命科学大学客員教授 成島 悦雄 氏
株式会社とんざこ設計室 代表 松崎 淳 氏
DIDE 代表 クリエイティブディレクター・グラフィックデザイナー・農業家 河村 敏彦 氏

司会・進行:神奈川大学准教授 諸坂 佐利 氏



補足コメント:河村敏彦 <DIDE 代表 クリエイティブディレクター・グラフィックデザイナー・農業家>

デザインを仕事としている立場で「動物園をデザインする」というテーマで総合討論に参加いたしました。デザインをするうえで必要な情報とスキルはデザインする分野で違いますが、動物園のデザインとなるとデザイナーに求められる情報とスキルは動物の生態や環境、飼育に関する専門的な情報など特別なものが必要で、新たにデザイナーそれぞれが情報の収集や勉強をすることが求められます。デザイナーには当然それも必要ですが、動物園のデザインができる専門的なデザイナーの養成が必要なのではと考えています。動物専門学校や大学での動物を扱うためのデザインカリキュラムです。現在デザイナーの専門分野も多方面に広がっています。動物園をデザインするデザイナーがそろそろ誕生していいと思います。そして日本人の心で動物の暮らしや環境を考えられるデザイナーが世界に影響を与えてくれたらいいなと思います。



テーマ 「動物園をデザインする2」


開催日:2018年12月15日(土)13:00~17:00
場所:日本大学(湘南キャンパス)生物資源科学部 1号館3階の131講義室
http://www.brs.nihon-u.ac.jp/campus_life/campus_map.html

プログラム

プログラム1
基調講演(60分)
「日本の動物園のデザインにおける現状と課題、そして今後の展望」
◼️小菅 正夫 氏
  特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授

プログラム2
対談(60分)
「旭山動物園の軌跡と奇跡」
◼️小菅 正夫 氏
  特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学 客員教授
◼️あべ 弘士 氏
  絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長

プログラム3
総合討論(100分)
上記の1、2のプログラムを受けての問題提起、質疑応答(フロアを交えて)

◼️あべ 弘士 氏
  絵本作家・NPO法人かわうそ倶楽部 理事長
◼️岩野 俊郎 氏
  北九州市 到津の森公園 園長
◼️森田 哲夫 氏
  宮崎大学名誉教授
◼️成島 悦雄 氏
  (公社)日本動物園水族館協会専務理事・日本獣医生命科学大学客員教授
◼️松崎 淳 氏
  株式会社とんざこ設計室 代表
◼️河村 敏彦 氏
  DIDE 代表 クリエイティブディレクター・グラフィックデザイナー・農業家

司会・進行:諸坂佐利(神奈川大学准教授)

17:00 閉会


シンポジウム報告


2018年12月の第12回のシンポジウムに多くの方の参加をいただき誠にありがとうございました。

前回のテーマを引き続き「動物園をデザインする2」に動物園関係者から学生の方々にも興味を持たれ、多くの参加をいただきました。今後将来、動物園はどうデザインされるべきか?、実際の実例をご紹介しながら、種の保存、環境、教育など学問研究の立場や実際に動物園を設計、マネジメントをする立場であるリーダーたちにご登壇いただき、議論を交えました。

今回ご登壇いただきましたの方の考えを掲載いたしておりますので、どうぞご覧ください。


第12回シンポジウム概要報告はこちら



2018年6月の第11回のシンポジウムに多くの方の参加をいただき誠にありがとうございました。

今回のテーマ「動物園をデザインする」にデザイン業界の方々や動物管理を目指す学生にも興味を持たれ参加をいただきました。今後将来、動物園はどうデザインされるべきか、種の保存、環境、教育など学問研究の立場や実際に動物園を設計、マネジメントをする立場であるリーダーたちにご登壇いただき、議論を交えました。

今回ご登壇いただきました数名の方の考えを掲載いたしておりますので、どうぞご覧ください。


登壇者紹介


◾️ 小菅 正夫 氏
特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学客員 教授

◾️ 森田 哲夫 氏
宮崎大学 名誉教授

◾️ 松崎 淳 氏
株式会社とんざこ設計室 代表

◾️ 岩野 俊郎 氏
到津の森公園 園長

◾️ 成島 悦雄 氏
(公社)日本動物園水族館協会専務 理事・日本獣医生命科学大学客員 教授

◾️ 村田 浩一 氏
日本大学 特任教授


第1部 基調講演


「こどもたちと動物園」


宮崎大学 名誉教授 森田 哲夫 氏


動物園の4つの役割はよく知られているが、それ以外にも子供たちの情操を育む上で動物園は少なからず貢献する可能性があると考えている。

絵本や歌を通じて知っている動物を実際に動物園で見ることは幼児が動物への関心を深めるきっかけになると考える。動物を知ることの楽しさを伝える展示や解説は各地の動物園でみられる。また、園の随所にある子供たちを優しい気持ちで包む工夫は情緒の安定に寄与しうる。国外には、体や心に障がいを持った子供や大人が楽しめる園が存在するとも聞く。ひとに優しい動物園はインクルーシブ社会の重要な構成要素になるとも思う。

地元に定着した国内移入種を展示し、ひとの手で拡散させないことの重要性をわかりやすく伝えることで子供たちの環境倫理に関する意識が高まる。また、ふれあいエリアでの手洗いの指導は人獣感染症予防に関する正しい衛生意識を定着させ、適切な距離をもって動物に接することの意義を知らしめる。子供に向けたこれらの啓発活動を動物園は担っている。

昔ながらの姿を留める日本在来の家畜には歴史・考古学・民俗学との接点が存在する。在来家畜展示の解説で関連分野の知見が紹介されることから、動物園は人文科学分野につながる扉も持つといえる。手ほどき次第でこどもの知識欲は生き物にとどまらず広がりうる。

動物のもつ凄さを展示することは私たちが生き物に対する畏敬の念を培うきっかけとなるとされている。しかし、凄みのある行動を示す動物種の数は限られている。でも、不思議なことなら単細胞生物・無脊椎動物から脊椎動物までたくさんある。例えば、毎年、渡りの途中のアサギマダラを観察することでこのチョウの驚異の飛行能力を子供達は知る。不思議だなと思う気持ちは科学する心に発展する。

動物園は環境適応の多様性を知る教材の宝庫である。ピーターラビットシリーズの、まちと田舎でそれぞれ暮らすネズミは食性も消化管形態も随分違う。目視では捉えにくい生き物の適応の多様なあり方を知るには比較生理学と比較解剖学が有用である。それをうまく展示に組み込む試みが各地で行われている。多様性を理解することは他者への寛容さを醸成するとされている。子供にもそれが当てはまるといい。

子供の情操の涵養という大きなテーマを掲げながら専門外かつ力量不足ゆえの視野の狭さと理解不足が目についたのではないか。門外漢の話に付き合ってくださったことに謝意を表したい。




 


「動物園をデザインする」


到津の森公園 園長 岩野 俊郎 氏


1 動物園のデザインとは


新規にしろ、改修にしろ、新しい動物舎は新しい基軸で考えられるべきである。しかし現状は、海外の先進的動物舎あるいは商業的に斬新と思われる動物舎「デザイン」であることが多い。それ故に既存あるいは連続的な動物舎とのあるいはその動物園が持つ環境との調和が取れず、その動物園の独自性を失うことにも繋がっている。

今回の「動物園をデザインする」というこの小論は上記事項に注目し、論理を展開する。


2 動物園のデザインは構造物のデザインではない


過去、動物園は「アミューズメント」としての役割であった。教育や研究の場ではなかった。そのように断定はできないかも知れないが少なくとも多くの動物園はそうであったろう。子どもの情操教育とはよく言われるが。小さな囲い込みの例えば1頭のサルが教育的であるとはとても言い難い。

基本にあるのは「見せる」ということであったであろう。種としての行動等の生活の供覧ではなくて、個の姿のみがただ珍しいといういわゆる概観的「興味」であった。現在でもその主旨は生きており、マスコミ等で取り上げるのは珍しい動物が主である。珍しい動物は新しい建物と等価である。つまりそれは「人目を引く」ということを意味している。成功例を真似ようとするコマーシャリズムは成功するとは限らない事例を多く造り出している。

デザインが構造物のことを意味しないとしたら、何をデザインするのか。デザインとは「[ある目的のための](入念な)計画」(ジーニアス英和大辞典)でもある。この小論はそれに沿って進めている。

動物園の「デザイン」はまず初めに動物園の指針を決めることから始まる。それがいわゆる「ポリシー」である。用語は様々であろうが「揺らがない方針」とでも言ったら良いだろうか。職員、市民、動物を巻き込んでいるのであるから「揺るがない方針」はすべての基本である。もちろん時代的背景の中で徐々にその姿を変えるということがあったとしても。

日本各地の広がる動物園は各地の特色の上に成り立つもので、一時の興味や思い付きによって振り回されるものではない。それは日本の立ち位置と同じで、日本が世界に何ができるかというのは、日本独自のやり方で貢献すべきことでもある。それ故に、地方の動物園と国立の(日本の)動物園が並立できる理由でもある。地球上では日本はローカルである。


3 動物園の将来


日本の動物園は海外の動物園に遅れをとっていると言われている。それ故に海外からのバッシングも当然のことのように起きる。そのギャップを埋めるのは動物に対する科学的視点しかないかもしれない。日本での動物を見る目は明らかに他の生物であり、空間をシェアする隣人ではない。今日まで地球上に共存してきた生物同士としての科学的理解が今こそ必要で、日本人はそれができる豊かな感性と知識を持ち合わせている。
そのような基本的な思考こそ、「動物園をデザインする」最低条件となるであろう。

最後に、日本の飼育員のレベルは世界水準であると思っている。どの国の飼育員より科学的な知識と理解を示し行動している。今そのような若者が増えている。海外の権威づけられた階級社会とは全く様相を異にしている。日本の飼育員は科学者であり、現場で活躍するフィールドワーカーである。彼らの活躍なくしては日本の動物園の発展はないと断言できる。




 


話題提供


動物園のイメージを作るためのデザイン


(公社)日本動物園水族館協会 専務理事・日本獣医生命科学大学 客員教授 成島 悦雄 氏


動物園をデザインするというと、まず、動物舎の配置、園路の通し方、観客導線、管理施設の配置などが頭に浮かぶ。これらの内容は基調講演の演者によって話されることと思うので、私からは統一したデザインでその動物園のイメージをアピールすることについてお話ししたい。

私が勤務した東京都井の頭自然文化園は、同じ都立動物園といっても上野動物園や多摩動物公園にくらべると知名度が圧倒的に低い。武蔵野市と三鷹市にまたがる園域をもつ面積12ヘクタール弱のこぢんまりとした動物園で、地元の利用者が過半数を占める地域密着型動物園である。すぐそばに三鷹の森ジブリ美術館があるが、外国人利用者で賑わう同美術館に比べ、外国人の利用者は1%にも満たない。

入園者数をやみくもに増やす必要は無いが、園で行われている多彩な活動を多くの方々に活用してもらうことは、野生動物を理解し、その生息環境を守るうえで動物園として必要なことである。潜在的な利用者を増やすためには、園がどのような活動を行っているか、人々にイメージを発信していくことが大切であると考える。

幸い、井の頭自然文化園には常勤ではないが専任のデザイナーがおり、各種催しのポスター、園内案内掲示板、動物解説板、パンフレット、動物園グッズ(手ぬぐい、ポーチ、T-シャツ)等を統一した雰囲気のデザインで制作している。駅貼りポスターでは、乗客からこのポスターをほしいという声を複数頂いている。

デザイン原案が完成した段階で、園の担当と協議し修正が加えられて世に出ることになるが、統一した雰囲気のデザインであるため、一目で文化園に関係するものだとわかり、園のイメージを伝えやすい利点がある。具体的には小さい子どもがいる親子での来園を促す一方、大人にも穏やかで静かな時間を過ごせる動物園らしいとの想いを抱かせるデザインとなっている。

園外に掲示されるポスターを、継続的に似たような雰囲気のデザインで提供すれば、園名を見なくても井の頭自然文園で何かやるんだなと自然に思い起こさせる効果が狙える。実際に園に足を踏み入れるて園内の掲示や解説版が同じ雰囲気で作られていれば、更に文化園イメージを利用者の脳裏に訴えられることになる。

言葉を介さずに園の活動を伝えるには、園のイメージをデザインで作り上げていくことがことのほか効果的であると感じている。もとよりイメージに合った日々の活動を充実させていくことは言うまでもない。




 


特定非営利活動法人 代表理事・北海道大学客員教授 小菅 正夫 氏

株式会社とんざこ設計室 代表 松崎 淳 氏

日本大学 特任教授 村田 浩一 氏


会場の様子