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当会副代表の岩野俊郎到津の森園長が、この度園長を退任するにあたり、去る3月26日に「動物園と私」というタイトルで記念講演会が開かれました。その模様を少しまとめてお伝えしたいと思います。

岩野園長は、1972年に到津の森公園の前身である到津遊園(西鉄)に入社し、1997年に園長に就任、2000年の閉園を経て、2002年の到津の森公園の開園により園長を再任し、これまで50年間、園長としては20年間動物園と関わってこられました。



講演会では、「固定概念(ステレオタイプ)」を切り口に、自身がどのようなポリシーを持って、動物園に関わってきたかを熱弁されました。

到津遊園から到津の森公園になる際に、敷地は同じで・動物頭数が半分・遊具が5種に激減し、これからどう園をつくっていくかを突きつけられました。これが、動物園人生のターニングポイントになったと話し、「動物園の固定概念を変えないといけない」と思い立ったそうです。岩野園長の場合、それは人気動物を飼うことや人気動物園の展示を真似することではありませんでした。これらは、一過性のもので、お客さんが来なくなっても、動物園ではその先もずっと飼育し続けなければなりません。



「二番煎じではなく、オリジナリティを活かした動物園」をつくるためにしたのは、原点回帰です。到津の森公園は、「緑と動物園」を残したいという、北九州市民の26万人の署名活動によって開かれた園です。その市民の声に答えるためには、「動物にこだわるのではなく、四季を再現した森をつくり、あそこに行ってよかった・おもしろかったと思える環境をつくること」だと考え、園づくりをしました。またこの環境は、人は一生の内に3回動物園に行く(しか行かない)という言葉がありますが「四季ごとに1年で4回動物園を楽しむ」ことができ、「こんな動物園がある街に住んでみたいと思うことは、動物園がその街のクオリティを上げることにもつながる」と話していました。



最後に、梅原猛さんの哲学者の仕事は今の世の中の真理を検証することという言葉や、人類の起源を探る研究がDNA鑑定によって変化してきたことを例に挙げ、「動物園の考え方も、時代時代で何が必要かを問いかけ、検証しなくてはならない」と語りました。そして、現在精力的に取り組む洋書の翻訳作業を紹介し、新しいことを勉強し、知ることが「動物園はこうあるべきだという固定概念を変え、 同じところをグルグル回る常同行動から抜け出すことになる」と締め括りました。



質疑応答の後に、盟友であり当会代表の小菅正夫元旭山動物園園長からの手紙が読まれ、目頭を熱くされる姿がありました。

講演会の中で「千尋の谷」という表現がありましたが、これまでに閉園と開園という谷を飛び越えた園長がおられたでしょうか。岩野園長はこの二度の谷を飛び越えて、常同行動から抜け出しました。そして、その谷に橋をかけ、私たちに新しい動物園の景色を見せてくれました。4月からは、名誉園長として到津の森公園を見守るとともに、この橋をもっと渡りやすくしてもらえることを願います。 岩野園長、お疲れ様でした!

(文責:今井)



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