コラム

ハリネズミの敵!?

日本人の多くは、たまにペットショップで売られている(あるいはそれを買ってペットとして飼育されている)ハリネズミを見るかもしれないという程度で、それほど馴染みのない生き物である。しかしヨーロッパ特に英国では屋敷の庭に普通にやってくる可愛くて(人にもよるであろうが)触らない限り無害な生き物で、たぶん誰でも知っている生き物である。20数年前モンゴルに野生動物を見に行った際、夜間テントから外に出てみると小さな生き物がのそのそ歩いていた。それがハリネズミで、容易に捕まり掌の上で丸くなってコロコロと転がすことができ、噛まれることもなかった。地面に置くとそのままさっさと闇の中に消えて行ってしまった。

その無害さ故に研究も遅れ、この本を書いたパット・モリス博士が最初の研究者と言ってもいいかもしれない。人間に役に立つあるいは害になる生き物の研究は早くから始まるが無害な生き物(例えばホタルなど)が研究対象となるのはそれよりもずっとあとのことだ。しかし野生の世界ではこのような進化は必然として生まれ、本来の生息地の生態系を守るためになくてはならない(直接的に人間の役には立たなくても)存在となっているはずである。

今のところ彼らの敵はアナグマかも知れないが、人間の存在も侮れない。車社会になろうとはハリネズミは予想もせず、ましてや車に轢かれるとは夢にも思っていなかった。

この本はハリネズミの専門書という訳でもなく、このような社会的エピソードのみでもない。さまざまな視点からハリネズミという生き物を紹介し、貴方に新しい視点を提供する。ハリネズミを通して自然との接し方をも身に付けるかもしれない。

変わることは進化することでもある。ハリネズミは掌に小さな痛みを残すだけではない。ハリネズミが持つ大きな自然も貴方の心に残すだろう。「ハリネズミかあ」から「おっ!ハリネズミ!」。この差は大きい。

この本を翻訳して下さった本会理事の森田哲夫先生らに感謝を捧げたい。
そうそう、ページの模様がまた可愛い。

国立動物園をつくる会 副会長 岩野 俊郎


紹介した本
『ハリネズミ大全 かわいいトゲトゲの不思議な生態』
パット・モリス[著]森田哲夫+川道美枝子[訳]
築地書館 2026年2月刊行 A5判並製 232頁+口絵8頁 2,600円+税
ISBN978-4-8067-1701-0
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